家族が逮捕された!これからどうなるの? 逮捕からの流れを解説します。
突然自宅に警察官がやってきて,夫が連れて行かれました…1日経っても自宅に帰って来ず,警察署に連絡をしても「詳しくはお伝えできません」と言われて困惑しています。
夫がなぜ警察に連れて行かれたのか,いつになったら戻ってくるのか,私はどうすればいいのか,全く分かりません。
刑事事件の場合に多いのが,このようなご家族からのご相談です。
初めてのことで右も左も分からず,ご不安な思いをされている方は多いのではないでしょうか。ここでは,そのような方のために,逮捕されてからの流れをご説明します。
1.逮捕
逮捕とは,短期間の身体拘束のことです。
逮捕期間には,最大で72時間という時間制限があります。逮捕されると,警察署で取り調べを受け,犯罪事実の確認等を行います。
⑴ 逮捕されたらすぐに家には帰れない?
逮捕期間中は,弁護士を含め外部の者からの働きかけで身体拘束を解いてもらうことは極めて困難です。ですので,一度逮捕された場合は,72時間は自宅に戻ってこない可能性が高いと考えておいてください。
もっとも,事案が軽微であったり,ご家族が身元引受人になって警察署まで迎えに来てくれた場合等には,早期に身体拘束が解かれ,在宅事件として捜査が続くこともあり得ます。在宅事件になった場合は,警察署や検察庁に通いながら取り調べ等を進めていくことになります。
⑵ 逮捕はいつされるの?
「逮捕」というと,警察官が「逮捕状」を持って自宅に現れ,そのままパトカーで警察所に連れて行かれる,という場面を想像する方が多いのではないでしょうか。これは,逮捕状に基づく「通常逮捕」と呼ばれるものです。通常逮捕であっても,必ずしも警察官が自宅まで来て逮捕状を示す,というわけではありません。警察からの呼び出しがあって警察署に出向いたところ,逮捕状を見せられて逮捕されるというケースも存在します。
逮捕にはその他にも,今まさに犯罪行為を行っている人を逮捕する「現行犯逮捕」や「淳現行犯逮捕」,重大事件で緊急性の高い場合に行われる「緊急逮捕」も存在します。
一言に「逮捕」と言っても,様々な方法がありますから,いつ逮捕されるかは誰にも分かりません。
2.勾留
勾留とは,逮捕に続く長期間の身体拘束のことです。勾留期間は10日間ですが,必要れば,もう10日間延長される可能性があります。つまり,勾留期間は最大で20日間続く可能性があるのです。
⑴ 勾留されるのはどんな場合?
逮捕期間の最終段階で,検察官が長期間の身体拘束が必要かどうかを判断し,必要だと考えた場合には裁判所に勾留の請求を行います。そして,最終的には請求を受けた裁判所が,勾留をするか否か,何日間の勾留が必要かを判断します。
身体拘束を解けば逃げてしまう可能性がある,犯罪行為にかかわる証拠を隠したり壊したりする可能性がある,といった場合には勾留される可能性が高いでしょう。また,ネットカフェを生活の拠点にしているとか,友達の家を転々としているといった場合には,定まった住所地がなく,逃亡の恐れがあると判断され,勾留される可能性が高まってしまいます。
ですから,これらの事情がなく,交流の必要がないと検察官が判断した場合や,検察官からの勾留請求を受けた裁判所がこれを認めなかった場合には,身体拘束が解かれ,「在宅事件」として捜査が続くことになります。
⑵ 勾留期間中は何をするの?勾留が終わったら裁判?
検察官は,勾留期間が終わるまでに起訴するかどうかの判断をしなければなりません。そのため,勾留期間中はこの判断材料を集める作業,いわゆる「捜査」を行うのです。取り調べを行ったり,事件の内容によっては事件現場に直接行って検証を行うこともありますし,警察署内で事件の再現を行うこともあります。
検察はこれらの捜査の結果を踏まえて,起訴・不起訴を判断します。
「不起訴」と判断されれば身体拘束は解かれます。一言に「不起訴」と言っても様々なパターンが考えられます。
捜査の結果,「この人は犯人じゃなかった」という結論に至れば「嫌疑なし」として不起訴になります。また,「裁判で有罪にできるだけの証拠がない」場合には「嫌疑不十分」として不起訴になります。
一方,裁判で有罪にできるだけの証拠がある場合でも,犯罪行為の内容や,被害者の怒りの程度(被害者と示談が成立しているか,等),本人の反省の程度等を総合的に判断してあえて起訴しないという判断を検察官が行うことがあります。この場合を「起訴猶予」と呼び,一番多い不起訴のパターンと言えるでしょう。
不起訴になれば,直ちに身体拘束が解かれますので,すぐに自宅に戻ることができます。この場合は事件が終了していますから,取り調べ等が続くことはありません。
3.起訴
起訴された場合は,身体拘束が続く可能性があります。詳しくお話ししていきましょう。
⑴ 略式起訴
「起訴」と言うと,刑事ドラマでよく見るような,裁判官の前で話をさせられる手続きを想像する方が多いと思います。これは,起訴の中でも「公判請求」というもので,公判請求とは別に「略式起訴」というものがあります。
本人が犯罪事実を認めており,検察官が「罰金刑(もしくは科料)が相当」と判断した場合は,公判請求ではなく略式起訴を行うことができるのです。ただし,略式起訴ができるのは,罰金が100万円以下である場合のみです。略式起訴の場合も,身体拘束が解かれることになりますから,その後に罰金を納付します。
⑵ 公判請求
起訴のうち,先ほどお話した「公判請求」をされた場合には,後日裁判の日程が決められることになります。裁判の日には本人も出廷しなければなりませんから,基本的に身体拘束は続きます。ただし,起訴後には「保釈」という制度が存在します。本人の逃亡を防止するために保釈金を納付し,きちんと監督してくれる人がまわりにいることを裁判所に伝えることで,保釈が認められる場合があります。保釈が認められなければ裁判が終わり,判決が出される日まで身体拘束は続くと考えた方が良いでしょう。
判決で無罪もしくは執行猶予になれば,身体拘束は解かれますが,懲役刑の実刑判決が出た場合にはそのまま身体拘束は続きます。保釈が認められていても,実刑判決が出た場合には,その場で身体拘束をされてしまうことが多いでしょう。
4.まとめ
以上お話ししてきたように,逮捕後は勾留という長期間の身体拘束が続き,起訴されてしまうと更に身体拘束が続いてしまいます。しかし,弁護士が介入して釈放に向けて活動を行うことで,事案によっては早い段階で解放してもらえる可能性も十分考えられます。
ご家族が逮捕され,お困りの方は是非一度ご相談ください。