保釈金とは?有罪になっても保釈金は戻ってくるの?

保釈金とは?有罪になっても戻ってくるの?

 「保釈金」という言葉はテレビ等で耳にすることも多いでしょう。芸能人が多額の保釈金を支払って保釈されたというニュースもよく目にします。ですが,そもそも保釈金とは何のために支払い,そのお金はどうなるのでしょうか。

 ここでは,保釈の制度・保釈金の疑問についてお話ししていきます。

1.保釈の制度

 通常,逮捕・勾留されている事件では起訴された後も身体拘束は継続されます。しかし,起訴された後は取り調べ等の捜査は行われないのが通常です。身体拘束されていても特にすることもなく,裁判の日を待つ場合が多いでしょう。

 身体拘束を継続する主な理由は,裁判の日に被告人が間違いなく出頭できる状況にしておくため(被告人の逃走を防止するため)と,身体拘束を解いたことで事件に関係する証拠等を被告人が隠したり壊したりすることを防止するためです。そのため,逃走や証拠を隠すおそれがなければ,被告人の身体拘束を継続する必要はないと言えるでしょう。被告人にとっては,身体拘束が解かれれば日常生活に戻れるのですから,メリットは大きいはずです。

2.保釈が認められる場合

 保釈の請求は,起訴後であればいつでも,何度でも行うことができます。保釈の請求を受けた裁判所は,検察官に意見を聞く等した後,保釈を認めるかどうかの判断を行います。裁判所が保釈を認める場合は,①義務的保釈,②権利保釈,③裁量保釈,の3つのパターンがあります。

⑴義務的保釈

 義務的保釈とは,被告人の身体拘束が不当に長くなっている場合に認められる保釈です。裁判所が「身体拘束が不当に長い」と判断すれば,弁護人からの請求がない場合でも,保釈を認めることができます。

 もっとも,職権保釈による保釈が行われることはほとんどありません。実際は,次に述べる権利保釈か裁量保釈がほとんどです。

⑵権利保釈

 権利保釈とは,刑事訴訟法89条に列挙されている事由に該当「しない」場合に認められる保釈です。89条の列挙事由に該当しない限り,裁判所は保釈を認めなければなりません。刑事訴訟法89条に列挙されている具体的な中身は次の通りです。

①死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯した

 ①に該当する場合は,犯罪の重大性から重い刑罰が予測されるため,逃亡の恐れがあると考えられるでしょう。

②前に,死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役もしくは禁錮に当たる罪で有罪の宣告を受けたことがある

 ②に該当する場合は,以前に有罪の宣告がなされている以上今回も重い刑罰が予測されるため,逃亡の恐れがあると考えられるのでしょう。なお,有罪の「宣告」を受けていれば足り,執行猶予の場合や未だ判決が確定していない場合でも,②に該当すると考えられます。

③常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯した

 ③に該当する場合も,重い刑罰が予測されますから,逃亡の恐れがあると考えられるでしょう。

④罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある

 証拠を隠滅されてしまうと,裁判手続きが円滑に進まなくなりますから,保釈を認めることはできないということになります。

⑤被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者やその親族の身体・財産に害を加え,又は畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由がある

 ⑤は,いわゆる「お礼参り」と言われるものです。証人等の証言も重要な証拠ですから,被害者等に接触して罪証を隠滅する恐れがあると考えられる場合です。

⑥氏名又は住所が分からない

 氏名が分からず,住所も定まっていない場合は,逃亡の恐れがあると考えられます。

 

以上述べた6つの項目に該当しない場合には,裁判所は保釈を認めなければなりません。これが,権利保釈です。

⑶裁量保釈

 権利保釈が認められない6つ項目のいずれかに該当する場合であっても,様々な事情を考慮して裁判所が「適当と認めるとき」にも保釈が認められる場合があります。

 考慮される主な事情としては,実質的な逃亡や罪証隠滅の恐れの程度や,身体拘束を続けることによる被告人の健康上・経済上の不利益等です。更に,保釈金の額も重要な考慮要素になるでしょう。

3.保釈金は何のために支払う?

⑴保釈金を支払う意味

 保釈を認める場合には必ず保釈金の支払いが命じられます。ですから,裁量保釈を認める場合には,保釈金の金額も重要な考慮要素の1つになります。

 保釈金は正式には「保釈保証金」と呼ばれています。初めにお話ししたように,被告人の身体拘束を続けるのは,逃亡や罪証隠滅を防止するためです。保釈金も,被告人の逃亡等を防止するため,つまり保釈の制度を保証するために支払われるものなのです。

 あくまで「保証」のために支払われるものですから,目的が達成されれば保釈金は返還されます。つまり,被告人が逃亡したり罪証隠滅を図ったりせず,裁判が滞りなく進めば,保釈金は戻ってくるのです。

⑵保釈金の額はどうやって決まるの?

 保釈金は基本的には戻ってくるお金ですが,逃亡したり,裁判所との約束を破った場合には,一部もしくは全額が没収されてしまいます。ですから,保釈金は「没収されたくない」と被告人が考える額を納めることになるのが一般的です。

 例えば,保釈金の額が1万円だったとしましょう。懲役刑等の重い刑罰が想定される場合であれば,「1万円を没収されたところで刑罰を免れるのであれば安いものだ」と考える被告人は多いはずです。一方,保釈金が100万円であれば,決して安くない額ですから,返してもらいたいと考えるのが一般的でしょう。ただし,年収が数億円の被告人であれば,100万円も安く感じるかもしれません。

 このように,保釈金の没収が痛手になるかどうかは,被告人の状況によってそれぞれ異なります。ですから,保釈金の額は想定される罪の重さや,被告人の財産状況等を考慮して決定されます。

4.有罪でも保釈金は返ってくる?

 保釈金は被告人の出頭等を確保するために支払われるお金です。そのため,目的が達成できれば支払った保釈金は返還されます。ただし,逃亡を図ったり証拠を隠滅したり,保釈の条件に違反した場合等は,保釈が取り消されたうえ,保釈金の一部もしくは全部が没収される可能性があります。

 保釈の条件としてよく定められるのが,住居の制限です。決まった場所で居住するように定められますから,勝手に居所を移したり,海外に渡航したりすると,逃亡のおそれがあるとみなされ,保釈が取り消されるかもしれません。

 裁判を遂行する目的が達成されれば,判決内容がどのようなものであれ,保釈金は還付されます。実刑判決がでて刑務所に収監された場合でも,収監証明書を裁判所の窓口に提出すれば,保釈金は返してもらえます。

5.まとめ

 保釈により身体拘束を解かれることで,住居等の制限はありますが,被告人は裁判の日まで通常通りの生活を送ることができます。仕事に復帰したり,連絡が途絶えて心配している知人に連絡をしたり,社会復帰の準備を早急に整えることができるでしょう。また,裁判に向けた準備のため,弁護人との打ち合わせも柔軟に行うことができます。

 いち早く日常生活を取り戻すためにも,保釈の制度は不可欠なのです。

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