交通刑事事件対応の弁護士

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〇 交通刑事事件の概要

 犯罪白書によれば、令和元年の道路交通法違反の検察官新規受理人数は、23万9500人と非常に多数が受理されていることがわかります。過失運転致傷罪等の認知件数も36万8516件、危険運転致死傷罪については666件となっています。交通刑事事件の特徴としては、一般の方が加害者となっていますおそれがある事件類型であるということです。他の刑事事件は多くが故意犯であるために通常の市民社会を送っているとして警察にお世話になるといったことがあまりないことに対して、交通事故、交通刑事事件は自動車を運転する方は巻き込まれてしまうおそれがあります。ここでは、まず、交通事故において逮捕をされないためになすべきこと、交通刑事事件となった場合の弁護活動についての解説を致します。

〇 交通刑事にて逮捕されないために

 交通事故を引き起こしてしまったからといってすべての事件で逮捕・勾留などがなされるわけではありません。逮捕は、逮捕の必要性と逮捕の理由が存在することとなります。重大、悪質な事例では場合には、罪証の隠滅や逃亡により裁判所に出廷できないなどの必要性があると判断される場合があります。人身事故と物損事故とでは、人身事故の場合には、重大な案件とされることがあり得るでしょう。過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪などの案件、逃亡するなどして道路交通法上の救護義務違反、危険防止措置義務違反、警察への報告義務違反を行っている案件については、逮捕の必要性が高いと判断されることがあり得ます。
 また、飲酒運転、無免許運転、危険なスピード違反、交通前科などがある場合には、悪質なものとして逮捕がなされていくおそれがあります。住所が定まっていない、職業が不安定である、仕事についていない、監護・監督を期待できる家族がいない場合などは逃亡のおそれがあるとして逮捕の危険性が高まってしますこととなります。客観的状況に反する不合理な供述を行っているなど罪証隠滅のおそれがあると判断されることはあり得ます。
 したがって、交通事故を発生させた場合には、下記のような事項が必要となります。

① 直ちに自動車の運転を停止して、事故の状況を確認し、負傷者が発生していた場合には、負傷者を救護する、119番の通報を行うなど救護義務を果たすことが必要となります。

② 道路におけるさらなる交通事故の発生を防止するために自動車の誘導を行う等危険を防止するための措置を取ることが必要となります。

③ 警察官に対して、事故が発生した日時、場所、死傷者数、負傷者の負傷の程度、損壊したもの、損壊した程度、車両の積載物、事故に対して講じた措置を報告することが必要となります。

また、刑事的な側面ではありませんが、
④ 任意保険会社に加入している場合には、任意加入の保険会社に対して、事故が発生したことを報告することとなるでしょう。

⑤ 証拠保全については、警察が行うものもありますが、スマートフォンでご自身や相手方が現場での話した内容を録音していくなどがなされるとよいでしょう。仮に、軽微な案件として、ドライブレコーダーを警察が取得しないなどの案件であったとしても、民事的には重要な証拠となるため証拠保全をしておくことが大切となってきます。

⑥ ご家族に連絡が取れるのであれば、連絡を取り、身元引受人となってもらう等を依頼しておくことで、警察に迎えに来てもらうといった場合もあり得ます。

 交通事故を発生してしまった場合には、現場から逃亡することなく、救護、危険防止、報告などの各種の道路交通法上の義務を履行していること、家族の身元引受などから逃亡のおそれがないこと、罪証隠滅のおそれがない対応を行っていくことが大切となります。

 なお、注意点としては、逮捕をされず、在宅事件となったからといって刑事事件として取り扱われていないわけではない点には注意が必要です。

〇 逮捕されてしまった場合の対応

 逮捕されてしまった場合には、勾留請求・決定がなされないよう刑事弁護人に依頼をして早期の身柄解放を目指していくこととなります。勾留については、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ、住所が定まっていること、勾留の必要性が欠けることなどを主張していくこととなります。もっとも、裁判所は証拠関係が整うまでは勾留を認めてしまう傾向があり、勾留却下率は、4%程度と低い割合となっています。しかし、弁護士からの早期の身柄解放を目指していくことで早期に解放されるというケースもあり得ますので、監護監督状況などを伝えいくことが大切となるでしょう。

 取調べの対応について刑事弁護人に依頼をして接見をしてアドバイスをもらうことも大切です。多くの人々にとって取調べを受ける経験は人生で初めての経験であり、整理してうまく話すことができないことはあり得ます。また、供述調書という書面が作成されますが、警察が供述をきいて記載されるために、どうしても担当捜査官の見立てに沿った調書が作成されてします恐れがあり得ます。捜査に協力するとしても、身近らの認識やニュアンスと異なる供述調書を作成してしまうことは不利な証拠となってしまうおそれがあります。弁護人側で供述調書を作成することも考えられるため、自らが納得できない調書については署名・押印をしない、弁護人と相談してから決めるなどを行っていくとよいでしょう。

〇 示談交渉などの弁護活動について

 交通刑事事件については、任意保険会社に加入している場合には、任意保険会社に連絡を行い、損害賠償交渉についての打ち合わせや保険対象となる案件であるかなどを確認していくこととなります。過失相殺の有無など損害賠償金算定についての計算を行っていかなければなりません。交通事故事件などでは、むち打ち症などにより症状固定などに時間がかかり、刑事裁判までに示談交渉を完了させ、民事的な解決を行うことができない可能性があり得ます。示談交渉経過などによりどの程度の金額が支払われる予定であるのかを裁判所に報告をできるよう準備をしておくことが必要となるでしょう。お見舞金などをお渡しするといった場合や謝罪などを適切に行っていくことがありえます。
 死亡事件などであった場合には、当然ながら被害者は殺されてしまったと強い感情を抱くことはむしろ当然であり、適切、丁寧に謝罪を行っていくことが必要となってきます。ご家族や親族などが謝罪をされる場合もあり得ますが、相互に不適切な事態とならないよう場所を選び、謝罪方法を工夫していくことが必要となってくるでしょう。

 情状立証を積み重ね、正式裁判とならないよう不起訴処分や罰金刑などとなるような働きかけを検察官に行っていくこととなります。もっとも、犯情などにより正式裁判となった場合には、正式裁判の援助を受けていくといったこととなるでしょう。情状証人や動機、一般情状として執行猶予を選択すべき事情があるなどを示していくことなります。

 
 交通刑事事件については、刑事弁護人を選任し、刑事弁護活動などの様々な活動を行っていくことが必要となってくるでしょう。交通での刑事事件となってしまった場合には、弁護士などに相談されることをお勧めいたします。

 なお、交通刑事事件については、どのような被疑事実となっているのかによって量刑や今後の展開が大きく変わってくることとなります。行ってしまった類型がいかなるものであるの成立要件や罪名などを確認しておくとご相談の際に有益となるでしょう。

〇 交通刑事事件の成立要件

(1)危険運転致傷罪(自動車運転処罰法2条・3条)

悪質な自動車運転による死亡事件などが社会問題となったことを受け、平成25年には、自動車運転処罰法が成立し、平成26年5月20日から施行がなされています。また、あおり運転により致傷事件が発生していることから令和2年には、危険運転致死傷罪の類型として、①自動車の通行を妨害する目的で、重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中の自動車の前方で停止、著しく接近するとなる方法で運転する行為により人を死傷させた場合、②高速道路等において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止するなど、これに著しく接近する方法で自動車を運転する行為により人を死傷させた場合が追加されました。

 危険運転致死傷罪として下記の行為により、人を負傷させた場合には、15年以下の懲役となり、人を死亡された場合には、1年以上の有期懲役となります。

① 酩酊運転致傷類型
アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態の走行させる行為
正常な運転が困難な状態とは、道路事情、交通の状況および運転車両の性質に応じた運転操作が困難な状態をいい、酩酊の影響により前方注視やハンドルなどの操作が困難な心身の状態となることが必要です。

② 制御困難運転致傷類型
自動車の制御困難な危険な高速度での走行させる行為
制御することが困難な高速度とは、スピードが速すぎるために自らの車を進路に沿って走行させることが困難であることいい、ハンドルやブレーキのわずかな操作ミスによって事故は発生させる状態をいいます。

③ 未熟運転致傷類型
自動車の進行を制御する技能を有しないで走行させる行為
制御する技能を有しないとは、ハンドル、ブレーキ等の操作など運転技能が著しく未熟なことをいいます。無免許であるかではなく、技能の有無により判断されます。

④ 通行妨害運転致傷類型
  人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
  速度は、割り込みや幅寄せによる妨害行為をとれば大事故を起こすと一般に認められる場合をいいます。目的犯であり、重大な交通の危険を生じさせること、相手の自由かつ安全な通行妨害を積極的に生じさせることを意図していることが必要となります。

⑤ 通行妨害運転致傷(あおり運転)類型
車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
通行を妨害する目的とは、相手方に自車との衝突を避けるために急な回避措置をとらせるなど、相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することをいうと解されます。

⑥ 高速道路等妨害運転致傷類型
高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為

⑦ 信号無視運転致傷類型
赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
殊更に無視しとは、およそ赤色信号に従う医師を積極的に欠くことをいいます。

⑧ 通行禁止道路運転致死傷類型
通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

・3条における類型
⑨ 準酩酊運転致死傷・準薬物運転致死傷類型
 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を致傷させた者については、傷害の場合12年以下、死亡の場合15年以下の懲役が定められています。
⑩ 病気運転致傷類型
 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気(てんかん、統合失調症など)の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人と致傷させた場合には、傷害の場合12年以下、死亡の場合15年以下の懲役が定められています。
 これらは明らかな酩酊状態以外についても一定の処罰ができるように規定したものと考えられます。

(2)発覚逸脱罪(自動車運転処罰法4条)
 アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、人を致傷させた場合に、その運転の時のアルコールや薬物の影響の有無等、発覚することを免れる等免れる行為をした場合には、12年以下の懲役の刑事罰がなされることが定められています。
 これは危険運転致死傷罪の発覚を免れるために逃げた場合に処罰するもので、逃げ得を防止するための規定です。

(3)自動車過失運転致傷罪(自動車運転処罰法5条)
 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役、禁固、100万円以下の罰金を受けることとなります。
「自動車の運転上必要な注意」とは、自動車の運転者が、自動車の各種装置を操作し、そのコントロール下において自動車を動かす上で必要とされる注意義務を意味すると解されます。

(4)無免許運転における加重(自動車運転処罰法6条)
 危険運転致死傷罪、過失運転致死傷罪、発覚免脱罪において無免許であった場合には、加重がなされることとなります。それぞれの刑事罰が3~5年が加重されることとなります。

(5)道路交通法違反
 道路交通違反には様々な制度があり、各行為により行政処分や刑事罰がなされる場合があります。違反点数が6点以下の軽微な違反であれば、手続きが簡略化されており、交通反則通告制度による反則金を収めた場合には、刑事罰としての手続きが進められないこととなっています。

① 酒気帯び運転 (呼気中アルコール濃度 0.15mg以上0.25mg未満)
  3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
② 酒酔い運転  (呼気中アルコール濃度 0.25mg以上)
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
③ 無免許運転
  3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
④ 速度違反
  一般道路において時速30km以上
  高速道路において、時速40km以上
  6か月以内の懲役又は10万円以下の罰金
⑤ 救護義務違反
  10年以下の懲役又は100万円
⑥ 報告義務違反
  3月以下の懲役または5万円以下の罰金
⑦ 危険防止措置義務
1年以下の懲役又は10万円以下の罰金違反
⑧ 妨害運転(いわゆる「あおり運転」)
 交通の危険のおそれがある場合
 3年以下の懲役または50万円以下の罰金
 著しい交通の危険がある場合
 5年以下の懲役または100万円以下の罰金

 妨害運転罪については、あおり運転などを防止するために10の類型について規制を行っています。
・通行区分違反
・急ブレーキ禁止違反
・車間距離不保持等違反
・進路変更禁止違反
・追越し方法違反
・減光等義務違反
・警告器使用制限違反
・安全運転義務違反
・最低速度違反
・停車及び駐車違反

 交通刑事事件は、自動車運転処罰法、道路交通法の罪名がそれぞれ問題となってきますので、分かっている限りでどのような事件であったのかをご相談の際にお教えいただけると今後の弁護方針を決めていく一助となるでしょう。刑事事件で弁護士を探されている場合には、ぜひ法律事務所にご相談ください。

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