お金を借りたけど返せなくなった…これって犯罪?

お金を借りたけど返せなくなった…これって犯罪? 

 自動車で自損事故を起こして修理代が必要になったのですが,給料日前でお金がありませんでした。そこで知人に数十万円お金を借りたのですが,その後仕事を辞めてしまい,お金を返す目途が立たなくなってしまいました。知人はかなり怒っており,弁護士や警察にまで相談に行っているようです。

 
 このように,お金を貸した人からすると,約束の日までにお金が返ってこなかったり,連絡が取れなくなると,不安になるものです。「騙された」と勘違いして,警察に相談してしまうかもしれません。一方,借りた方からすると,返すつもりはあるのに何らかの事情で返済が難しくなってしまうことも多いでしょう。そのような場合でも,何らかの犯罪が成立してしまうのでしょうか。

 ここでは,借金の返済が滞った場合に刑事事件に発展するリスクについてご説明します。

1.お金を借りることは犯罪?

 当然ですが,お金を借りること自体は犯罪ではありません。民法上も,「消費貸借契約」といって,お金等を借りることを典型的な「契約」類型として定めています。

 消費者金融業者にお金を借りることは当然ありますし,知人にお金を借りたり,手持ちが足りずに急遽友人に飲み代を立て替えてもらう,ということも想定されます。

 お金を借りる場合は,「返す」という約束のもと,他人からお金を受け取っています。つまり,返済する意思をもってお金を受け取っているのですから,貸す側と借りる側の意思が合致して正式な契約が成立しているといえるのです。

 ですが,「返すつもりだった」と言っても,借りた側の意図は本人以外の誰にも分かりません。実際にお金が返ってこなかったら,「騙された」と思われてしまうかもしれません。では,どのような場合に詐欺罪が成立するのでしょうか。また,詐欺を疑われる可能性があるのはどのような場合なのでしょうか。

2.「お金貸して!」が詐欺罪に該当することもある!?

⑴ 詐欺罪の成立

 刑法上の詐欺罪は,「人を騙す行為」が存在し,この行為で「騙された」被害者が,「財産的な支出」を行った場合に成立します。また,騙している側が,「人を騙している」と認識している必要があります。

 

 たとえば,Aさんから「良い投資話があるからお金を預からせて」と誘われたBさんが,「投資をするんだな」と勘違いして,Aさんにお金を渡した場合を想定します。

 この投資話が嘘だったとすると,「投資話がある」というAさんの持ちかけが「人を騙す行為」で,「投資話がある」とBさんが勘違いしたことで,Bさんは「騙された」と言えます。そして,「投資のため」にAさんにお金を渡したことが,Bさんの「財産的な支出」になるのです。そして,「投資話が嘘」だと知って話を持ち掛けていれば,Aさんには「人を騙している」と認識していると言えるでしょう。

 
 この例であげた場合であれば,「投資話が嘘かどうか」という点が明らかになれば,詐欺に該当するかどうかは比較的明らかになりやすいでしょう。一方,「お金を貸してほしい」と持ち掛けた場合,少し話は複雑です。

⑵「お金貸して」が詐欺罪になる場合

 先ほどお話しした詐欺罪の成立要件に当てはめて考えてみましょう。

 「お金を貸してほしい」と告げる「騙す行為」に基づいて,被害者が「お金は貸すだけ。後で返ってくるんだな」と勘違いをしてお金を渡す。そして,「貸して」と告げた側に返すつもりがなければ,詐欺罪が成立する可能性があります。

 投資話が嘘だったという場合と異なり,「お金を貸して」と告げる行為が「騙す行為」だったかどうかは,通常「貸して」と告げた人にしか分からないものです。つまり,お金を借りる行為が詐欺罪に該当するかどうかを客観的に明らかにすることは難しいと言わざるを得ません。

 とはいえ,客観的な事実から詐欺行為の存在を推認することは可能です。「貸して」と告げた人の言動や当時置かれていた状況等から,「返すつもりはなかったのではないか」と推認することはできるのです。

3.どんな場合に詐欺を疑われる?

 では,どのような場合に詐欺を疑われるのでしょうか。借金の返済が滞るのは,「返すつもりはあるのにお金が用意できないから待ってほしい」という場合ほとんどです。返すつもりがあるのに詐欺罪を疑われたら大変です。では,どのような事情があれば,「お金を返すつもりはなかった」と勘違いされやすいのでしょうか。

⑴ 返す能力がない場合

 お金を借りた当初から全く返済の当てがなかったという場合は,「返すつもりはない」と思われるかもしれません。仕事をしておらず安定した収入の目途が立っていなかったり,特にまとまったお金が入る予定もないのに,「1か月で全額返せる」等と告げて大金を受け取った場合は,詐欺を疑われるかもしれません。返せる目途もないのに「返す」という約束をすることは,通常考えられないからです。

 一方,「ギャンブルで一発当てて返すから」と告げて知人からお金を借りたという場合,「ギャンブルで当たったら」という不確定な条件を前提にしており,その点は貸した側とも合意が成立していると言えますから,詐欺罪は成立しないかもしれません。ただし,「ギャンブルで当たったら返そう」と内心で思っていただけなのであれば,その他の事情から詐欺罪を疑われてしまう可能性もあります。

⑵ 一度も借金を返済せず,連絡を絶っている場合

 通常お金を返すつもりがある人は,返済が難しくなってもその理由をきちんと説明し,少額ずつであっても返済の姿勢を示すでしょう。ですから,一度もお金を返さないばかりか返せない理由の説明もなく,貸した側からの連絡にも対応しないという場合は,「初めから返すつもりがなかったのではないか」と疑われてしまうのです。

⑶ 借りる際に虚偽の情報を伝えていた場合

 金融機関からお金を借りる場合等は,氏名や住所,連絡先等を申告するものです。その際,嘘の情報を伝えていた場合は,金融機関からの連絡を受け取るつもりがなかった,つまり,お金を返すつもりがなかったと思われてしまうでしょう。

4.詐欺の疑いで警察に呼ばれたら…

 お金を借りただけなのに詐欺罪を疑われてしまった場合,「返すつもりがあること」をきちんと説明しなければなりません。警察の取り調べを受けることになり,言われるがまま調書にサインをすると,詐欺を認める自白の調書が出来上がってしまう可能性もゼロではありません。

 詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」という重いものです。身に覚えのない詐欺罪で有罪になってしまうと,最悪の場合実刑となり刑務所に行くことにもなりかねないのです。個人間の借金であっても,悪質な場合は刑事事件として取り扱われることもあります。

 詐欺罪を警察に疑われている場合,取調べ等に適切に対応していくことが重要ですから,すぐ弁護士にご相談ください。

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